はじめに:「強いリーダー」より「影響力のあるリーダー」に!
薬剤師の皆さん、日々のお仕事お疲れ様です。
仕事をする中で
「もっとスムーズに仕事を進めたい」
「職場の人間関係を良くしたい」
「患者さんともっと深い信頼関係を築きたい」
と思うことはありませんか。
そう願うあなたにぜひ知ってほしいのが、アダム・グラント氏の名著『GIVE & TAKE 与える人こそ成功する時代』です。
この本は、人から信頼を得て成功する鍵は「与えること」にあると教えてくれます。
今回は、「影響力」というテーマに焦点を当てて、そのエッセンスと具体的な活用法を深掘りしていきます。
書籍紹介:『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』
ギバーって何?テイカー、マッチャーと言われる人との違いは?
人間関係における3つのタイプ
世の中には、人間関係における行動パターンで主に3つのタイプに分けられます。
- ギバー(与える人): 見返りを求めずに、他者に惜しみなく与える人。
- テイカー(奪う人): 自分の利益を最優先し、他者から奪おうとする人。
- マッチャー(バランスを取る人): ギブ&テイクのバランスを重視し、公平であることを求める人。
ギバーとは、自分のためではなく他者のために動ける人のことです。
他者に貢献することに喜びを感じ、自分の周りの人がより幸せに・成功に近づけるために行動します。
普段から他者貢献をしているため、多くの人から信頼され、結果としてよい人間関係や幸せな人生を歩むことができます。
強いリーダーシップだけが正解じゃない!薬剤師にこそ必要な「影響力」とは?
「影響力」と聞くと、あなたはどんなイメージを持つでしょうか?
「リーダーシップを発揮して、周りを引っ張っていくこと」
「自分の意見をしっかり主張して、周囲を納得させること」
もちろん、それも一つの形です。
しかし、『GIVE & TAKE』では、影響力を得るためには「優位」と「信望」の2つの方法があると書かれています。
優位と信望、あなたはどちらで影響力を高める?
優位とは、力や権威によって相手を動かすアプローチです。
テイカー(奪う人)は、この優位を確立するのが得意です。
確かに自分の実績を強調し、声を高々に主張することで、一時的に周囲を動かすことができるかもしれません。
しかし、考えてみてください。
仲間と協力して業務を進めるとき、患者さんが薬に不安を感じているとき、一方的に「私が正しい」「私の言う通りにすればいい」という態度では、どうなるでしょうか?
おそらく、この人を信用しようとは思わないでしょう。
たしかに、薬剤師は専門職として責任ある立場にいます。
相手のことを思って時には断固とした態度も必要でしょう。
しかし、常に優位な立場に立とうとすると、相手は反発し、かえって信頼関係を損ねてしまう可能性があります。
一方、信望は、尊敬や称賛によって影響力を得るアプローチです。
ギバー(与える人)は、この信望を自然と集めます。
尊敬や賞賛はギバーとして振舞うことで減るものではなく、むしろ周囲に循環して無限の価値を生み出します。
薬剤師として、患者さんや仲間から「この薬剤師さんなら信頼できる」「この人と一緒に働きたい」と心から思われること。
それこそが、真の影響力と言えるのではないでしょうか。
薬剤師のコミュニケーションを変える「ゆるいコミュニケーション」の力
テイカーが「強気なコミュニケーション」で優位を追求するのに対し、ギバーは「ゆるいコミュニケーション」を大切にします。
「強気なコミュニケーション」とは自分の実績や知識があることを強調し、権威や地位を示して主導権を握る方法です。
「ゆるいコミュニケーション」とは、強引な話し方をせず、分からないことは正直に言い、人のアドバイスを喜んで受け入れる姿勢のことです。
弱点を隠さず、むしろさらけ出すことで、相手との距離を縮めます。
「え、弱みを見せても大丈夫なの?」
そう思った方もいるかもしれません。
特に専門職である薬剤師は、「完璧であるべき」というプレッシャーを感じやすいものです。
しかし、安心してください。
ここには「プラットフォール効果」という興味深い現象が関係しています。
プラットフォール効果とは?完璧な人より「ちょっとドジな」人が愛される理由
プラットフォール効果とは、有能な人がちょっとしたミス(ヘマ)をすると、かえってその人の好感度が上がる現象のことです。
例えば、普段から的確な情報提供やスピーディーな意思決定をして頼りになる先輩薬剤師が、うっかり言い間違いをしてしまったり、忘れものをしてしまったり…。
そんな時、私たちは「ああ、人間らしいな」「なんか親近感が湧くな」と感じることがありますよね。
これは、完璧すぎる人に感じていた「近寄りがたさ」がなくなり、人間的な魅力として映るからです。
ただし、この効果が発揮されるのは、周囲の人々に有能だと認められている場合に限ります。
普段からきちんと業務をこなし、知識やスキルが十分にあると認識されているからこそ、弱みを見せることで「人間味」が加わり、さらに信望が高まるのです。
「常に完璧でなければならない」というプレッシャーから少し解放されて、「時には弱みを見せても大丈夫なんだ」と思えることは、日々の業務における心理的な負担を軽減してくれるはずです。
質問力こそ、薬剤師の最強の武器!患者さんとの信頼関係を深める問いかけの技術
ギバーが影響力を高める上で最も効果的な方法の一つは、「質問すること」です。
患者さんへの服薬指導、医師への疑義照会や情報提供、他職種との連携など薬剤師の仕事は「対話」の連続です。
その中で、私たちはつい「伝えたいこと」ばかりを考えてしまいがちですが、本当に大切なのは「聞くこと」なのです。
相手は「話す喜び」を求めている
人は、自分の考えを伝えることに喜びを感じます。
質問を通じて相手に話す機会を提供することは、相手に「自分の伝えたいことを分かってくれようとしている」と感じさせ、信頼関係を築く上で非常に有効です。
例えば、患者さんが「この薬、飲んでも大丈夫かな…」と不安そうな顔をしているとき。
「この薬はこういう作用があって」「先生が出してくれたので飲んだ方がいい」と一方的に説明するのではなく、 「何か気になることはありますか?」「この薬について、どんなことが心配ですか?」 と問いかけることで、患者さんは心を開き、抱えている本当の不安を話してくれるかもしれません。
質問は「相手のニーズ」を知る最良のツール
質問は、相手の考えや求めていることを知るための最高のツールです。
「この患者さんは、薬についてどんなことが気になっているのだろう?」
「この人(医療従事者や地域連携スタッフ)は、どんな情報が欲しいのだろう?」
と考え、自分自身に問いかけることで相手の視点に立って物事を考えることができます。
そして実際に質問することより、的確な提案やサポートができるようになります。
新しい関係の構築や、多職種連携で意見の食い違いがあると感じた場面では、この質問力が大いに役立つはずです。
「アドバイスを求める」は決して弱さじゃない!仕事の効率化にも繋がるギバーの交渉術
「人にアドバイスを求める」こと。 これは影響を与えるための驚くほど効果的な方法です。
「人に聞くなんて、自分の無知をさらけ出すようで嫌だ」
「頼りないと思われたくない」
そう感じる人とは異なり、ギバーはアドバイスを求めることを恐れません。
むしろ、積極的に人に意見を求めます。
「アドバイスを求める」4つのメリット
人にアドバイスを求めることには、実に4つのメリットがあります。
- 情報の獲得: 自分だけでは知り得なかった知識や視点を得ることができます。これは想像しやすいでしょう。
- 自分の身になってもらうこと: アドバイスを請われると、アドバイスする側はあなたの立場に立ってその問題を見る必要があります。
これにより、相手はあなたの状況をより深く理解し、共感してくれるようになります。 - 相手との関わり合いが強められる: 相手が解決策を提案したとき、その問題への関わり合いが強まります。
提案した時点で考える時間とエネルギーをすでに投入しているため、さらにあなたを助けようという気持ちになりやすいです。
これは、チームでプロジェクトを進める際などに、メンバーの主体性を引き出す上で非常に有効です。 - ゴマすり(相手の自尊心をくすぐる): 人にアドバイスを求めることは、相手の知見や専門知識を信頼し、敬意を払っていることを示します。
人は自分の意見やアドバイスを求められるのが大好きです。
相手の自尊心をくすぐることで、良好な人間関係を築き、協力を得やすくなります。
「うちの店舗の在庫管理がうまくいかなくて、何かいい方法はありませんか?」
「患者さんへの説明、どうしたらもっと伝わりやすくなると思いますか?」
「私に足りないものがあれば、ぜひ教えてください。皆さんの役に立てるようにもっと努力します。」
このように、心からアドバイスを求めることで、同僚や先輩、他職種との連携がスムーズになり、結果として仕事の効率化にも繋がっていくでしょう。
大切なのは「心から」求めること
ただし、このアドバイスを求める戦略は、心からそうしないと効果がありません。
下心があって、ただ相手に取り入ろうとしているだけだと、すぐにバレてしまいます。
ギバーの「ゆるいコミュニケーション」が効果的なのは、心から他人の利益のために行動しようと思っているからです。
自分の弱みを見せることで信頼を得て、相手を欺くのではなく、相手の話を聞き出すことで力になろうとする。
これが、ギバーの真髄なのです。
まとめ:薬剤師として「与える」ことで得られる最高の成功
『GIVE & TAKE 与える人こそ成功する時代』が教えてくれるのは、「与えること」「素直に受け入れること」が成功への近道という真実です。
薬剤師として、日々の業務の中で私たちは多くの人々と関わっています。
患者さん、医師をはじめとした医療スタッフ、地域医療スタッフ、そして仕事仲間。
彼らに対し、損得勘定抜きに「与える」意識を持つことで、あなたの仕事も人間関係も劇的に変わっていくはずです。
今回の内容をまとめると、
- 影響力を高めたいなら、力でねじ伏せる「優位」ではなく、尊敬と賞賛を集める「信望」を目指しましょう。
- 「完璧な薬剤師」を演じる必要はありません。時には弱みを見せる「ゆるいコミュニケーション」で、人間的な魅力を高めましょう。
- 「質問する」ことを徹底し、相手の考えやニーズを深く理解することで、信頼関係を築き、より良いサポートを提供しましょう。
- 困ったときは、素直に「アドバイスを求める」ことで、周囲の協力を引き出し、自身の成長と仕事の効率化に繋げましょう。
これらは決して特別なことではありません。日々の業務の中で少し意識を変えるだけで、誰でも実践できることです。
さあ、今日からあなたも「ギバー」として、周りの人々に「与える」ことを始めてみませんか?
きっと、想像以上の喜びと成功があなたを待っているはずです。